うちに借金が生まれたのは、わたしが何か悪いことをしたわけでも、浪費を繰り返したわけでもない。夫が仕事中に大きな事故に巻き込まれた、それだけのことだった。
運送の仕事をしていた夫は、ある日突然、大きな交通事故に巻き込まれた。車は全損。免許も取り消しになった。運送業は車と免許が命だ。その両方を一度に失った夫には、続けられる仕事がなくなってしまった。
車のローンは残っていた。修理したばかりの別の車の修理代も残っていた。仕事に使っていた道具の支払いも、まだ終わっていなかった。収入はゼロになったのに、支払いだけが山積みになっていった。気づけば借金は400万円を超えていた。
廃業が決まったとき、わたしは後ろ向きになっている暇はないと思った。泣いても借金は減らない。怒っても状況は変わらない。今の自分にできることを、一つひとつやっていくしかなかった。
在宅の仕事を増やした。副業でも収入を得られるよう動き始めた。このブログも、その一環として始めたものだ。節約を本気で学んで、家計を徹底的に見直した。お金について勉強したのも、この経験がなければきっとなかった。
夫も転職先を見つけ、新しい仕事を始めてくれた。ただ、収入はそれまでの半分以下になった。生活費を賄いながら借金を返していくのは、簡単ではなかった。それでも、止まっていることの方が怖かった。動き続けることだけを考えた。
夫がしてくれたこと
夫は口数が多い人ではないけど、行動で示してくれた。
まずタバコを減らした。完全にやめるのは難しいけど、本数を絞って出費を抑えてくれている。お小遣いは基本ゼロで、タバコ代だけを最低限もらう形にしてもらった。文句ひとつ言わずに受け入れてくれた。お酒も飲まない、ギャンブルもしない、趣味にお金をかけることもない夫にとって、タバコは唯一の息抜きだ。それを減らしてもらうことがどれだけの負担か、わかっているから余計に感謝している。
交通費も削ってくれた。1駅分歩いて、電車代やバス代を浮かせる。毎日のことだから、積み重ねると意外と大きい。雨の日も、疲れた日も、黙って歩いてくれている。
さらに掛け持ちでバイトも始めてくれた。転職後の収入が半分以下になった分を、少しでも補おうとしてくれている。本業が終わってからバイトに行く日もある。体がしんどいだろうに、それでも家族のために動いてくれている。
「できるだけ多く稼いで、できるだけ使わない」。夫なりの、家族への向き合い方だと思っている。言葉で伝えてくれるタイプじゃないけど、行動が全部を語っている。
子どもには話していないけど、伝えていること
子どもはまだ幼いので、借金のことは話していない。正直に話したところで、理解できる年齢ではないし、余計な不安を与えるだけだと思っている。
ただ、「物を大切にすること」と「お金は働いて稼ぐもの」ということは、日々の生活の中で伝えるようにしている。
「ほしい」と言われたとき、すぐに買うのではなく、理由を説明してもらうようにした。「なんで必要なの?」「他のもので代わりにできない?」。そうやって考える習慣をつけてもらいたかった。どうしても必要なものだけを、ちゃんと買う。それだけで無駄な出費がずいぶん減った。
お手伝いをしたら1回10円を渡すようにもした。小さい金額だけど、働いてお金をもらうという経験を早いうちから積んでほしかった。子どもはお手伝いをするたびに嬉しそうにしているし、「10円貯まった!」と喜んでいる。借金返済中のわが家だからこそ、お金の大切さを体で感じてもらえる環境があると思っている。
子どもが大人になったとき、「うちはあの時期大変だったんだ」と知ることになるかもしれない。でもそのとき同時に、「でもみんなで乗り越えたんだ」と思ってくれたら、それで十分だ。今は子どもに心配をかけず、できる限り普通の日常を作ることを優先している。
わたし自身がやっていること
夫に頼るだけでなく、わたし自身も動いている。在宅での仕事を増やして、スキマ時間を収入に変える努力をしている。このブログもその一つだ。節約の知識をアウトプットすることで、自分の頭の中も整理されるし、同じ悩みを持つ人の役に立てるならそれ以上のことはない。
家計管理も徹底するようになった。何にいくら使っているか、今月の収支はどうか、返済はどこまで進んでいるか。数字を把握して、夫にも共有する。二人で同じ情報を持つことで、「うちは今こういう状況」という共通認識が生まれた。それがわが家の家計改善の土台になっている。
今の返済ペースと、これからのこと
節約と収入アップの両方を続けることで、少しずつ返済が進んでいる。大きな額ではないけど、毎月確実に減っている。先は長いけど、ゴールがある。それが今の支えだ。
返済が終わったとき、わが家はどんな家族になっているだろうと考えることがある。お金の管理が上手な大人に育った息子と、一緒に笑えたら。夫と、苦労した時期を笑い話にできたら。そのために今、頑張っている。借金があっても、夢を見ることをやめる必要はないと思っている。
節約で見えてきた「本当に必要なもの」
借金返済が始まってから、家計を根本から見直した。最初は何から削ればいいかわからなかったけれど、一つひとつ確認していくと、「なんとなく使っていたお金」がいかに多かったかがよくわかった。コンビニへのふらっと立ち寄り、スーパーでの衝動買い、使っていないサブスクの放置。意識していなかっただけで、毎月数千円が何となく消えていた。
削れるものを削っていく中で、逆に「これは削らなくていい」と思えるものも見えてきた。子どもとの外出、家族でたまに食べる外食、息子が楽しみにしているおやつ。お金をかける場所と、かけなくていい場所を意識して分けるようになったことで、使い方が変わった。我慢ばかりの節約ではなく、「使うべきところには使う」という感覚を持てるようになった。
返済が終わったとき、この経験で身につけた金銭感覚は財産になると思っている。もう「なんとなく使う」ことはないだろう。お金の使い方に対して、明確な意図を持てるようになった。それは借金があったからこそ、身についたことだ。
しんどい経験が、家族を変えた
後ろ向きになっていては何も解決しない。それはわかっていた。でも、正直しんどい瞬間は何度もあった。夜中に家計表を眺めながら、どうしてこうなったんだろうと思うことも、今でもある。
それでも今、振り返ってみると、この経験がなければ得られなかったものがたくさんあると思う。お金の勉強をすることもなかった。節約をここまで真剣に考えることもなかった。家族でお金について話し合うこともなかった。夫がここまで一緒に頑張ってくれることも、見えなかったかもしれない。
借金400万円はまだ残っている。返済はこれからも続く。でも、家族3人で同じ方向を向いて歩いていると感じられるようになったのは、この経験があったからだと思っている。つらい経験は、できれば避けたかった。でも避けられなかった以上、そこから何かを得て前に進むしかない。この経験を今後に繋げていけると、今は本当にそう思っている。
同じように家計で悩んでいる方、借金を抱えて途方に暮れている方に届けばいいなと思いながら、今日もブログを書いている。一人じゃないということを、少しでも感じてもらえたら嬉しい。
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