夫婦でお金の話をするのって、難しい。特に、失敗やミスがきっかけでお金が苦しくなったときは、どこから話せばいいかわからなくなる。責めているように聞こえないか、プライドを傷つけないか。言葉を選びすぎて、結局何も言えないまま時間が過ぎてしまうこともある。
わが家がそうだった。夫が事故に遭って廃業し、気づけば借金が400万円に膨れ上がっていた。でも最初の1年間、わたしはほとんど何も言えなかった。お金の話を切り出せないまま、一人で抱えて、一人で悩んでいた。
今は違う。夫婦でお金の状況を共有して、一緒に考えて、一緒に動いている。話し合いを始めてから、喧嘩がなくなった。わたし一人のストレスだったものが、ふたりで背負えるものになった。
どうやってその状態にたどり着いたか。同じように悩んでいる方に向けて、わが家の経験を正直に書いておきたい。
お金の話ができるまで、1年かかった理由
夫が事故に遭ったのは、突然のことだった。運送の仕事をしていた夫は、ある日大きな交通事故に巻き込まれて車が全損し、免許も取り消しになった。仕事を続けられなくなり、廃業するしかなかった。車のローン、修理代、仕事で使っていた道具の支払い。収入がゼロになったのに、支払いだけが積み重なっていった。
そんな状況でも、わたしはすぐにお金の話を切り出せなかった。理由は、夫の状態だ。事故の後遺症が残っていたし、心の傷も深かった。好きでやったわけじゃない、巻き込まれた事故だ。そこに「タバコを減らして」「節約して」と言うのは、傷口に塩を塗るような気がしてどうしても言えなかった。
結果として、1年間わたしは一人でお金の管理をしていた。カードの支払い、借金の返済、毎月の家計のやりくり。しんどかった。でも夫を追い詰めたくなくて、何も言えないまま時間が過ぎていった。
1年が経ったある日、「そろそろ話してもいいかな」と思えた。夫の様子が少し落ち着いてきていたし、このまま一人で抱え続けるのも限界だと感じていた。
最初の話し合いで伝えたこと
話し合いのテーブルについたとき、わたしが伝えたのは事実だけだった。車のローンの残高、修理代の支払い状況、毎月の生活費がどれくらい逼迫しているか。感情的にならず、数字を見せながら現状を共有した。
夫は黙って聞いていた。全部わかっていたと思う。でも改めて数字として見ることで、「一緒に考えなければ」という気持ちになってくれたんだと思う。
現状を伝えた上で、「今わたしたちにできることを一緒に考えたい」と話した。責める言葉は一切使わなかった。過去の事故のことも、収入が減ったことも、口にしなかった。「これからどうするか」だけを話した。
夫婦で決めた節約ルール3つ
話し合いの結果、わが家では3つのことを決めた。
1つ目は、タバコ代を月2万円以内に抑えること。
夫はタバコを吸う。お酒は飲まないし、ギャンブルもしない。趣味にお金を使うこともない。タバコが唯一の娯楽と言ってもいい人だ。だから「完全にやめて」とは言えなかった。でも本数を減らすことはお願いした。最終的に月1〜2万円の節約につながった。本音を言えばやめてほしいけど、夫の唯一の息抜きを完全に奪うのは違うと思っている。
2つ目は、交通費を削ること。
電車やバスを使っていた区間を、できるだけ歩くようにしてもらった。1駅分歩く、バスの区間も歩く。毎日のことなので積み重なると大きく、月2万円前後の節約になった。文句も言わずに実行してくれた夫には、本当に感謝している。
3つ目は、食材の買い物は業務スーパーに絞ること。
食材の買い出しはわたし一人で行くことを伝えた。一緒に行くと余計なものが増えてしまうことがあるので、わたしが計画的に買い物できる環境を作りたかった。この工夫で月2〜3千円の節約になっている。
お金の話をするときに気をつけていること
夫と話すとき、いつも意識していることがある。
過去のことは絶対に口にしない。
事故のこと、廃業のこと、収入が減ったこと。これらは夫にとって一番触れてほしくない部分だと思っている。「あのときこうだったから」「あれが原因で」という話し方をすると、たとえ責めるつもりがなくても責められているように聞こえる。だから過去の話は一切しない。今の状況と、これからどうするかだけを話す。
大黒柱のプライドを傷つけない。
男性にとって、「稼げていない」という状況は自尊心に関わる。わかっていても受け入れるのが辛い現実だ。収入が減ったことを責める言葉、比べる言葉は使わない。「一緒に乗り越えよう」という姿勢で話すことを心がけている。
定期的に現状を共有する。
今月の収支がどうなっているか、返済がどのくらい進んでいるか、気になることがあれば都度伝えるようにしている。事前に知っていれば、夫も心の準備ができる。「支払いが少し遅れそう」という話も、事前に共有すれば一緒に対応策を考えられる。以前はカード会社への対応もすべて一人で抱えていたが、今は夫も一緒に動いてくれる。事前に共有する習慣ができてから、わたし一人が慌てる場面がほとんどなくなった。
話し合いを始めてから変わったこと
夫婦でお金の話ができるようになってから、生活が変わった。
一番大きいのは、わたし一人のストレスがなくなったことだ。以前はカードの支払い調整も、借金の返済管理も、すべて一人でやっていた。夫には心配をかけたくなくて、黙って抱えていた。今は何かあれば一緒に考えるし、夫も対応を手伝ってくれるようになった。「わたし一人の問題」から「わが家の問題」に変わった瞬間だった。
夫婦喧嘩もなくなった。喧嘩の多くは、わたしのストレスが爆発していたことが原因だったんだと思う。お金のことを一人で抱えていたから、些細なことでイライラしてぶつかっていた。共有できるようになってから、そのストレスがなくなって、自然と喧嘩が減った。
夫も前向きに動いてくれている。掛け持ちでバイトを始めて、少しでも収入を増やそうとしてくれている。タバコも半分近くに減らした。1駅歩くことも、当たり前のように続けてくれている。言葉にしてお願いしたことで、夫も「自分にできることをやる」という気持ちになってくれたんだと思っている。
お金の話は、早ければ早いほどいい
振り返ってみると、1年間一人で抱えていたのは正直しんどかった。もっと早く話せていたら、と思うこともある。でも夫の状態を考えると、あのタイミングしかなかったとも思っている。
同じように悩んでいる方へ伝えたいことがある。お金の話は「完璧なタイミング」を待っていると、永遠にできない。相手が落ち着いたら、余裕ができたら、と思っているうちに時間だけが過ぎていく。まず家計の数字を紙に書き出してみることから始めてほしい。収入、支出、借金の残高。数字にして目に見える形にすると、「これを見せながら話せばいい」という具体的なイメージが湧いてくる。準備ができると、不思議と話す勇気が出てくるものだ。
夫婦でお金の話をするのは怖い。揉めるかもしれない、傷つけてしまうかもしれない。でも話さないと、何も変わらない。一人が黙って抱え続けるだけだ。まず事実を数字で見せること。過去を責めず、未来のためにできることだけを話すこと。相手のプライドを傷つけない言葉を選ぶこと。この3つだけ意識すれば、話し合いは思っているよりうまくいく。
お金の問題を一人で抱えているままでは、前に進めない。でも二人で向き合うと、確実に変わっていく。わが家がそれを証明してくれた。
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